織物の原理
最初に、ごく簡単に、織物の原理を説明します。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)
下の図が、最も単純な織物の模式図です。
垂直方向に伸びて並んでいるのが経糸(たていと)、水平方向に往復しながら経糸の間を縫うように走っているのが緯糸(よこいと)です。
経糸と緯糸が交互に上になったり下になったりしています。この糸の組み方を「平織(ひらおり)」と呼びます。この平織が最も基本的な組織です。
織物の織り方
織物の織り方は、大昔から現在まで、世界中どこでも、基本的には全く同じです。織物は、長さを揃えた経糸をきれいに並べてピンと張っておき、そこに緯糸を一段づつ入れていく、という方法で織ります。
上の写真は、バングラデシュの女性が腰機(こしばた)で布を織っているところです。
経糸の準備=整経
出来上がる布の長さと幅は、準備した経糸の長さと本数によって決ります。また、ストライプやチェックの柄を織り出そうとする場合は、色の違う経糸を柄に従って並べておく必要があります。一旦織り始めると、途中で経糸を変更することは困難ですから、十分に計画を立てて準備をしなければなりません。
上の絵は、1780年頃、李氏朝鮮時代の画家が描いたものです。手前で機織りをしていますが、その向う側では、経糸を並べて準備をしいます。このように長さを揃えて経糸を並べる準備作業を「整経」と呼びます。
緯糸の準備
これに対して、緯糸は、通常は、長さを揃えて並べることはしません。下の図のような、経糸の間を通すためのシャトルに糸を巻き付けたりするのが、緯糸の準備作業になります。
緯糸は、織っている途中で切れたり無くなったりしても、別の糸を繋いだり差し替えたりすることが出来ますので、あまり神経質になる必要はありません。合計の長ささえ十分にあれば、それで大丈夫です。
織機の仕組み
ごく原始的なものを除いて、すべての織機には、緯糸を通す隙間を作るために、経糸を上下に引っぱって分ける仕組みが付いています。この仕組みを開口装置といいますが、最も代表的なものが、下の図に見られるような「綜絖(そうこう)」と呼ばれる装置です。
この図は1922年に出版された百科事典に掲載されている織機の模式図です。綜絖を二枚持っている基本的な平織の織機です。
平織の場合は、二枚の綜絖を使って、次のようにして布を織ります。
まず、あらかじめ、経糸を一本おきに二枚ある綜絖の片側だけに通しておきます。そして、二枚の綜絖を上下逆方向に動かして経糸を分け、出来た隙間に緯糸を通します。通した緯糸は、「筬(おさ)」という櫛状になった板で「とんとん」と叩いて締めます。次の段では、二枚の綜絖の上下を逆にして、緯糸を通します。この動作を繰り返すと、平織の布が出来るという理屈です。
機織り
YouTube で見つけた機織りの実況ビデオです。
最新式のエアジェット織機を見るよりも、こういう素朴な織機の方が、仕組みがよく分りますね。
出典
このページでは、織物の模式図を除いて、WIKIMEDIA COMMONS にパブリック・ドメインとして登録されている著作権フリーの画像ファイルを利用しています。
また、YouTube の機織り実況ビデオは、このような「埋め込み」形式での利用を制作者自身が認めて公開しているものです。