糊を付ける理由
経糸に糊を付ける
例外はありますが、一般的には、経糸(たていと)には糊を付け、緯糸(よこいと)には糊を付けません。なぜなら、経糸は、緯糸に比べて、製織工程で受けるストレスが大きくなるからです。
第一に、経糸はテンションを掛けてピンと張られます。そして、綜絖(そうこう)によって上下に引っ張られます。さらに、綜絖(そうこう)による開口運動の結果、隣接する経糸同士がこすれ合います。
そのため、経糸には糊を付けて、糸の強度を補強したり、毛羽立ちを防いだりする訳です。
毛羽伏せ
経糸に糊を付ける理由の中で最も大きいものは、毛羽立ちの防止、「毛羽伏せ」です。
隣接する経糸同士が毛羽によって絡み合うと、綜絖による開口運動が阻害されたり、糸が切れたりして、織機による製織の効率が著しく悪くなります。
そこで、糸に糊を付けて、毛羽立ちを抑えます。
左側の写真は糊付けをする前の糸、右側は糊付けをした後の糸です。ともに麻糸です。
糊によって糸の毛羽が抑えられているのがよく分ります。
伸縮防止
糸の中には、非常に伸縮性の高いものがあります。
左の写真は、そのような糸の一種です。写真では分りませんが、手で引っ張ると「びよーん」と伸び、手を離すと「くるくるっ」と縮んで丸まります。
さらに、お互いに近付けると絡み合ってくっついてしまい、始末に負えません。
このような糸は、このままでは、織機に掛けるどころか、整経すら出来ません。
そこで、糊を付けたのが、左の写真です。
毛羽が抑えられて、ずいぶん細くなっていますが、上の写真と全く同じ拡大率の写真です。
さらに、これも写真では分りませんが、伸び縮みしなくなっています。
この状態にしてから、整経と製織を行います。
最後の写真は、糸の下半分だけ、水に湿して糊を落したものです。
このようにして糊を抜くと、元の「びよーん」「くるくる」の状態に戻ります。
実際の生産工程では、仕上・加工の段階で糊抜き(水洗い)が行われて、糸本来の伸縮性が回復されます。
このような糸は、糊を付ける前に整経をするということが出来ませんので、B2Bサイジングや一斉サイジングに掛けることが出来ません。
伸縮性のある糸を使って織物を織る場合には、一本糊付け(チーズ・サイジング)が不可欠になる訳です。