染色
左の写真は、紡績会社から調達した原糸です。ご覧のように、ナチュラル・チーズの固まりのような形をしていますので、この状態の糸を「チーズ」と呼んでいます。
このような原糸を、糸の性質や生産ロット数などに応じて、綛(かせ)染色、チーズ染色、ビーム染色などの方法で染めていきます。
綛(かせ)染色
綛(かせ)というのは、右の写真のような糸の束のことです。糸をこのような綛の状態にして染めることを綛染色と呼びます。
伝統的な織物の手作業による綛染色が一般によく知られていますが、工業製品の織物や編物でも、機械を使って綛染色を行う場合があります。
綛染色の前工程として、原糸を綛の状態に巻き取る「綛取り」が必要になります。綛取りは、一定の大きさの綛枠(かせわく)に、糸を一定回数だけ巻き付けて、そして枠を抜き取るという方法で行います。
小ロット向けの染色方法です。
チーズ染色
チーズ染色は、チーズの状態にした糸を染色釜に入れて染色する方法です。
一見、原糸と同じようなチーズですが、芯は中空のステンレス製で、表面に多数の穴が空いていたり、メッシュ状になっていたりします。(これに対して原糸のチーズは紙製の芯です。)さらに、染液が良く染み渡るように、糸の巻き方もソフトに巻かれています。
原糸を染色チーズに巻く前工程は「ソフト・チーズ巻き」と呼ばれます。
チーズ染色は、現在では、最も一般的な染色方法です。
ビーム染色
ビーム染色は、染色用のビームに糸を巻き付けて、染色釜に入れて染色する方法です。
前工程として、原糸を染色ビームに巻き取る「荒巻整経」を行います。ソフト・チーズ巻きの場合は、一つのチーズに一本の糸が巻かれますが、こちらの染色ビームには、長さを揃えた数百本の糸が同時に並べて巻き付けられます。
「荒巻整経」という呼び方からも想像が付くように、この方法は経糸專用の染色方法です。本来なら染色の後でする整経工程を先にやっておく訳です。
ビーム染色された糸は、染色工程の後、経糸(たていと)の準備工程に送られて、「一斉サイジング」という方法で糊付けが行われます。
わざわざ整経してビームに巻いた糸を緯糸(よこいと)に使うことはしません。また、経糸であっても、部分整経が必要になるような小ロットの場合には、ビーム染色された糸を使うことは出来ません。
つまり、ビーム染色は、経糸專用、しかも大ロット向けの染色方法なのです。
出典
綛糸の画像は、「織布技術の達人」というサイト(愛知県産業技術研究所 尾張繊維技術センター)に原本があります。
また、原糸のチーズ、チーズ染色、ビーム染色の画像は、東播染工株式会社のサイトにかつて原本がありました。
ともに、許可を得て使用させていただいています。
「織布技術の達人」(愛知県産業技術研究所 尾張繊維技術センター)
東播染工株式会社 > 染色部(現在このページは有りません)