糊にまつわる言葉
糊をかう
私の仕事は、「糊付所」と呼ばれる代りに「糊かい屋」と呼ばれることがしばしばあります。
お客さんから「○日までに良え糊こうといてや。頼むで」などと言われ、こっちも「分りました。パリッとした良え糊こうときます」とか応えます。
この「糊をかう」という言葉は、「糊を買う」という事ではなく、「糊を付ける」と言う意味で使っています。それは、お客さんも私も承知しています。しかし、漢字ではどう書くのか、分らない。分らないけれども、意味はお互いに通じている。まあ良いか、と思っていたのですが、やはり気になったので調べてみました。
漢字では「交う」または「支う」と書くようです。
建築の「筋交(すじかい)」と同じように、「間に入れて補強する」「支える」という意味があるんですね。
大阪でも、古くから、糊を付ける意味で「糊をかう」と言ったようで、糊を付けた衣類のことを「糊かいもん」と呼ぶそうです。
糊屋の看板
「儲かりまっか?」
「いやあ、糊屋の看板ですわ」
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これは大阪の古い洒落言葉です。
昔は、糊屋の看板は、右の絵のように、丸い大きな「の」の中に、小さく「り」を書いたものと決っていたようです。
「り」が小さい、利が細(こま)い、儲かりませんわ、ということですね。
ただし、この「糊屋」の糊が、何を原料にして作られ、どういう用途に使われたのかは、私には今ひとつよく分りません。洗濯の仕上げに衣類に付ける糊だろうと思われますが、表具や建具に使う糊のことだったかもしれません。澱粉糊だったことは確かだと思います。
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ちなみに、こちらは、本社工場の入口に掛っている藤岡糊付所の看板です。
創業者である父が丸岡白舟印舗(現在は株式会社白舟書体)の先代に書いてもらったものです。
出典・参考文献
このページの記述については、佐々木良範氏による文献「おおさかしゃれことば」および中井正明氏による文献「なにわことば三昧」を参考にさせていただいています。
六稜WEB(大阪北野高校同窓会) > 六稜・大阪学講座 なにわことば三昧 > (31) のりやのかんばん
このページに掲載している糊屋の看板の絵は、佐々木氏のページに掲載されているものを縮小したものです。元の画像は古い本から取り込まれたと思われるものですが、著作権がはっきりしません(残念なことに、佐々木氏に連絡が付かず、確認が取れないまま、氏の「おおさかしゃれことば」のページが消滅してしまいました)。味わいのある看板の絵なのであえて掲載していますが、著作権について支障があるようでしたら、ご一報ください。
糊の歴史については、「ヤマト株式会社」のサイトに記述があります。